2019.12.06
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2019年度懇親事業(11/2)「日本人の知恵と心と美意識が育てた“ふろしき文化”」を開催しました
2019年度の懇親事業を11月2日(土)開催しました。教育後援会の懇親事業は、会員間の親睦を深めることを目的に、年に1回開催しております。
例年、懇親事業では京都の文化・芸術に関連したテーマで開催し、好評をいただいております。
今年は「日本人の知恵と心と美意識が育てた“ふろしき文化”」に関する講演会を行いました。
はじめに、伝統産業イノベーションセンター長の米原有二教員が、本学の伝統産業について説明を行いました。本学では、京都の立地を生かした伝統産業に関する複数の授業があり、伝統工芸に関わる講師の方々から、伝統的なもの作りについて直接学ぶことができます。その中でも約40年続いている『京都の伝統産業実習・演習』というプログラムでは、夏休み中に学生達が工房などの各実習先に2週間滞在し、実際のものづくりの現場で学ぶ事ができます。「授業の中で学ぶことも大切なのですが、こうした実践的に伝統文化に触れる機会は貴重です」と米原さんは話されていました。
講演会のメインゲストには、山田繊維株式会社のむす美広報担当でもある山田悦子氏をお迎えしました。まず風呂敷の素晴らしさは日本の知恵であるという話から講演が始まりました。風呂敷と聞くと一般的に思い浮かぶのは、何かを包むもの、作法の一つと言ったざっくりとしたイメージだと思いますが、「暮らしの道具でもあり、日本人の知恵がぎゅーっと詰まっているもの。過去のものではなく、時代に合わせて活かすもの」と話されました。
次に、去年の 11 月にパリで FUROSHIKI PARIS というイベントが開催された様子を紹介されました。2018年が姉妹都市であるパリと東京の文化タンデムの一環として開催することにより日本文化を世界へ向けて発信し、2020 年の東京オリンピックも視野に入れ盛り上げていこう、という目的で行われたそうです。風呂敷包みをイメージしたパビリオンの中では、風呂敷を見るのも初めてというお客様に、変幻自在に姿を変えるふろしきの道具としての機能と芸術性(アート)の要素を同時に鑑賞するコーナー、伝統の中から生まれた日本の知恵は環境保護・サスティナブル(持続可能)な社会へ貢献できるものであること。ふろしきは、日本だけでなく国を越えて使えるものとして、ワインやフランスパンなどを風呂敷で包む体験コーナーが設置され、大好評だったそうです。山田さんはイベントで、言葉がなくとも感動が生まれるシーンをみて、風呂敷は国を超えたコミュニケーションにもなるツールと感じたそうです。そうした経験から、海外の方に日本文化を伝える時、風呂敷を活用していただけたら、と語られていました。
そして、風呂敷の歴史について、話が進みます。
「着物は体を包むもの」「風呂敷は荷物を包むもの」ということから、着物と風呂敷はどちらも畳むとコンパクトになり、体の大きさの変化にも対応ができる、という共通点があります。日本も今では西洋式の生活が主になっていますが、着物や風呂敷は収納スペースも融通が効きますし、風呂敷もバッグにして使うなど、今の時代にも十分取り入れることができます。
それから山田さんは、風呂敷を手にとって、会場にいる参加者の皆さんと一緒に実演をされました。まず最初に、「包む」「結ぶ」という言葉の由来について説明がありました。包むの「包」の漢字の象形文字は、もともと“母親がお腹に宿った胎児を守る姿”が元になっており、のし紙などにおいてもふろしきにおいても「包む」という行為は、中身を大切に扱い、相手を敬う気持ちの象徴なのだそうです。「むす」とは「無から姿ある、形あるものが生まれること」と言った意味合いがあり、平面の風呂敷も結ぶことで形をキープして様々な役割を担うことができる、という内容でした。
そして、「真結び」「一つ結び」という一番基本の結び方を学び、会場 の方々にも実際に風呂敷で結びを体験していただきました。
風呂敷の結び方により、一枚の布が、トートバック・手提げバッグ・リュックなど様々な形態に変わりました。
最後に、結び方の違いで、風呂敷が羽織に変わった瞬間、会場は歓声が上がりました。包むだけでなく、カーディガンのように肌寒い時にも使えるという画期的な方法の紹介でした。
また、災害時での風呂敷の活用方法について紹介がありました。撥水加工された風呂敷であれば、水をくみ上げることも可能で、大きな荷物や重たい荷物も風呂敷なら持ち運ぶこともできます。また、買い物かごに敷き、載せたものに合わせて大きさを変えて包むことで、そのままショッピングバッグにすることができるので、エコにも繋がります。会場では参加者の皆さんがペアになり、風呂敷を結べばバッグになると驚きの反応で賑わいました。
山田さんは「伝統や継承というのは、特別なことではなく、続けて“使う“ということ。日常に活かすことから“工夫”が生まれる。“知恵”が身につく。“心”が育つ。親や周りの人が使っている様子を子どもが見て学ぶ事ができる。それが、私たちが次世代にできること。」と、風呂敷を使う方が増えることで、自然に先の世代にも伝わって欲しいという思いを言葉にして、講演を締めくくられました。
ご参加くださったみなさん、ありがとうございました。来年度の懇親事業もみなさんの興味・関心に応えるテーマで企画したいと考えております。
ご意見・ご要望がございましたら事務局までお寄せください。(kouenkai@supporter.kyoto-seika.ac.jp)